2013年5月4日土曜日

サガルマータトレック 男性、女性そしてサルのあいだ






(記憶遥か)

  ナムチェでは大きな宿に泊まった。ロッジ風で天井が高い20畳以上のドミトリー部屋だった。僕ら二人と反対のブロックでは昼間から笑い声が絶えない。若い女性の登山者が二人、リズムに合わせたように秒きざみでケラケラ笑っている。どうやらオナラが止まらないためのようだ。

  そんな中、若い男性の登山者が黒沢君に向かって話しかけている。「日本人は部屋を一旦出てほしい」といってきた。なんだかわからないので、そのまま着替えていたらまた、その男性が催促してきた。わたしは「おかしいんじゃないの、なんで日本人なの?」と黒沢君に尋ねたら、そのスイス人だという男性と同行している女性が足を洗いたいので出てほしい、といいたいのだった。

  なんで室内でバケツの水で足を洗うのか、登山に慣れていないハイカーが飛行機で一気にLuklaを経由してナムチェに来ることができる現実にわたしはあきれた。ようやくナムチェに着き、わたしはそんな連中にかまっていられないという気持ちでいやいや部屋から出ようとした。扉越しに「男性は皆出るのですか?」と振り向けざまに言い外で待機していた。ところが男性は一人が続いただけでそのスイス人の男性はまったく部屋をでるそぶりを見せなかった。そこでわたしは腹が立ったのでまた扉越しに「君は男性なのか女性なのか、それともサルなのか」と憤懣やるかたない言葉を吐いた。

 「あのアベックは日本人を名指しで出てくれって。そういう連中なんだ」。共に部屋を出たフランス人はそう言った。そして、僕ら三人は10分も経たないうちに、笑うことも覚めてバケツをみつめていた若い女性の登山者たちのいる部屋に戻った。

 

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