2013年8月18日日曜日

色褪せた旅姿・・



318日カトマンズ発

 210日以来1か月ぶりでカトマンズを出発。途中、休憩場でバスから降りた西欧人が路上で泣いている子どもを抱きかかえ、住人に声をかけていた。
 
319日ジャマカプール

320日スリグリ

321日ダージリン

ダージリンに着いたらさっそく売るものを考えた。いっちょらのグリーンの山シャツにした。道で外人が「ダージリンで見るところがありますか?」と聞いてきた。カンチェンジュンガ(8586㍍)を望むタイガーヒルに行ったが「ほかに何処か?」という時間つぶしで困っていた人は、あの子供を抱えて叫んでいた旅人だった。「ZOO!」といったら納得していた。見るところがなかったら動物園が定番コース。

324日ガントック・シッキム グリーンホテル5リラ

シッキムはインドに併呑され、いたるところにインド兵がいる。観光気分にならない。久しぶりに雨が降り、お寺と学校を見に行く。

326日シールダッハ・インド

327日カルカッタ

カルカッタの宿でネパールとダージリンであったドイツ人、ハンス・ウヲルツさんと朝に再会。ドイツ語で「おはようございます」といったら「日本人は教養がある」そうだ。

カルカッタの熱さはビーチサンダルを溶かす。おまけに建築中の高層ビルの足場は竹がクネクネと曲がって組んであるので下から見上げるとクラクラする。博物館といえばイギリスの遺産のよう。「ドクターモローの島」(H・Gウエルズ)に出てくるような奇形の人間を含めた動物のホルマリン漬けの標本が展示してあり気色悪い。

 
331日バンコック・タイ

夜半にバンコク空港着。タクシーで市内に入ったものの宿探しが苦手のため、公園の滑り台下で寝ることにする。懐中電灯を照らす制服の二人は若い警察官だった。事情をわかってくれて近くの官舎に車でわたしを連れいってくれる。大部屋のカイコ棚のベッドで寝る。

41日 楽宮旅社30バーツ

412日ホワヒン 20バーツ

 リゾートビーチの町はこれから祭りごとがあるらしく、仮設の舞台では民族楽器の練習をしていた。路上には死後硬直した野良犬が野ざらしで捨ておいてあった。ホワヒンビーチにはプライベートビーチがあり、かってに泳いでいたら、サメに襲われるのではないかという恐怖心を感じ海の中で暴れる。

420日 バンコクに戻る

424日台北・台湾 白宮旅社80

 台湾空港の入管チェックで係官がわたしの顔をみながらいきなり「お前は赤軍派だな!」といいだした。嫌がらせだ。ノーを繰り返しようやく入国。

 428日最後の空旅。

出立の空港。搭乗機に向かうバスに乗ってつり革に佇んでいたら、目の前に座っていた日本人の中年男がわたしを上から下までなめるようにみつめぶつぶつ言っているので、いよいよ帰るんだ、と覚悟を決める。

 羽田から帰国したことを母に電話で告げる。蒲田行のバス停。一人のスチュワーデスがわたしを笑顔で見やりながらバスに乗った。私鉄の同じ駅の日航の女子寮にかえるんだなァと思った。駅を降りるとやはりスチュワーデスが前の方から下車していた。栄会通りの店を懐かしく見る。金物屋の倉方君。その後ろの家は佐久間君。安部ちゃんの表具屋さんが左手。角っこのバーバー・ミツハシには相変わらずガタイのでかい三橋はいないだろうなァと窓を透かして見る。八百屋の倉方君?に魚屋の相場君、と見知った小中学校時代の友達の店の前を通過して第三小学校。その先、角の山口さん家(ち)の路地を曲がって家の戸を開けた。色落ちした服につくろったザック、靴のやせこけた旅姿。母が縁側のガラス戸を開けて立って待っていた。「おかえりなさい」。(完)