2013年9月29日日曜日

青春18キップ的すすめ9  森の仕事 森の幸 ~諏訪郡富士見町沢入山 5





 


 
 

風の道


山には風の道がある。こんもりと常緑樹が茂った森に風の道が通る。山に巻くようにくねった林道がその通り道で、風を誘い込む。それが突然、空間がスポッと開かれると風の渦を巻く力がすさまじい。風の音がわづかばかりでも唸るからたまらない。

青木の森の敷地の上はちょうど二股で、Y字形の林道が通る。ところが、Yの上の方のVの敷地の樹木がきれいに刈られると、風は気流の唸りを高め太い風の道を見つけたとばかり恒常的に吹き貫ける。Vの敷地の常緑の森が消え、ナラや松の木はこの1-2年のうちに九割がた小屋で使うストーブ用の薪になってしまった。小屋の若主人がペンキの塗り立ての小屋とチムニー屋根を指さして薪ストーブがあっての山小屋だという。なるほどトレンドィな生き方は町だけではないのだ。

その空地と化した風の通り道のためか、敷地内の数多い赤松は高所地震の揺れ具合と似てよくしなる。たまらなくなった赤松の一本が裂けるように倒木していた。到着しての大仕事はこの裂けた赤松の撤去作業だ。

斧で裂けた赤松の樹皮を叩く。大人の高さの裂け目で助かる。千曲鋸を挽き、斧で上から下から叩くとあっさり幹を離れた。それから15㍍高の赤松をたたむように輪切りにしてナラの木の根本にうっちゃる。夕方までに帰ると言った手前、作業は小一時間で十分。スタミナも時間もない。おまけに今回は駆け抜けるような一人山仕事。里は黄金色の稲穂が垂れ秋本番。行くなら尾白川の湯桶がいい。