2012年8月23日木曜日

ヒュッテ・ツワイザアムカイトの快と怪       蛾 ガ


寝つかれない夜をあきらめ、5時すぎに起き、ロンドンオリンピックの閉会式をテレビにかじりつき見る。派手な閉会式は現代イギリスの文化を長々と紹介するコマーシャリズムの時間帯。役者はスーパーモデルであったり、よく知らない歌手ばかり・・。だが、その歌い手登場の佳境に「クイーン」がなんと出てきた。

 
・・ロックユーがかり・・と、ガラスの玄関扉の上の白壁に蛾が一匹目に飛び込んできた。一時、ブナの木にカブトムシが餌に誘われいるかなァ、と確認のため庭に出る。ソファーに戻り、定位置から白壁をみるとまだ睡眠中のようにして蛾がいる。でたか・・レディオ ガガ・・レディー ガガ。


去年もリビングのつり椅子に座り、うとうと寝ていたらいきなり左足の甲にドサッと大きな蛾が降ってきた。実際、林間の小屋には朝から夜まで出てこなくてもいいのに蛾が居ついている。小屋の持ち主が二代目になっても飽きることなく蛾のご先祖様の力がこの家を支配しているのだ。

 
そのことを緊張感をもって皮膚感覚でわかっているのが子どもたちだ。
小屋が開所して数年後、1981年8月9日から常備していたメンズショップTaka-Qのノベルティー商品を利用した「フリーノート」にその精神的苦痛が描かれていた。

 
1986年8月10日鈴木信行君、梅田真吾君の友人、高2.。1989年8月8日恭子君。いずれも「いい気分で泊まったのになんで蛾がいるの!」「やっぱり蛾はこわい!」と素直な感想。それが卒業が近づきイラつく年齢になると恭子君は「蛾がうじゃうじゃ飛んでくる。なんとかしてくれよーっ」とトラウマをかかえていたような叫び方だ。

 
ついに、子どもの切実な声にこたえない大人に向け刃が向けられ「おじいちゃんはうるさい!おじちゃんはやかましい!」とはけ口をみつけにきた。ところが、これが久しく小屋に来るのがご無沙汰になってくると記憶は深層から湧き出てくるようで、ドッポン便所を思い出し「トイレがこわい!」とついにでた。5年ぶりに来たという麻衣子君の気持ちがまるで真犯人をみつけたようなので納得した。

 

ヒュッテ・ツワイザアムカイトの快と怪      240度の視界


盛夏の野尻湖は神秘さとにぎわいの準備が同居している。砂間館の桟橋から湖を240度俯瞰すると朝6時前の静かさは湖面全体を覆っている。が、芙蓉の花びらに似た野尻湖の四方の岸辺の情景は非対称の図絵を見る。


太陽が斑尾山あたりから昇り、西の湖面を射す。次第にそれが東に移っていく。その時間差はバランスの妙であり、季節感が西の盛夏の水遊び場から東の初冬の朝の絶妙な二面性をみせるから不思議だ。


元の野尻湖ホテルあたりからYWCA、旧藤田観光の飛び込み台あたりを初冬の朝と見間違ってしまうのは、湖の水温が低いためだ。もやがかかり、太陽が昇るにつれようやく夏の憂いをもつグレーの配色に落ち着く。それを消しながら湖畔の夏の朝は深い緑に変わる。