八ヶ岳の山懐北にある白駒の池はすでに紅葉のピークを過ぎていた。高速インターの下諏訪を下り原村の裾野道を北へと向かう。思っていたより難度なく蓼科ビレッジの山岳道を上っていく感覚はまた来たくなる近道感が心地いい。大気が冷えてきた。温泉表示がつぎつぎと現れ麦草峠に差し掛かると以前からぜひ来たかった思いが沸き上がった。
白駒の池の公営駐車場に着くと登山者風のスタイルに着替える。降車して駐車場の係員にまず,聞いた。「熊はでました?」クマあらわる!の看板はすでに観光地と化した池、登山口の当り前の告知。大げさに言えば日本全体が新しいそれも急速なクマ対策の常態化の段階にはいっていた。
僕と連れ合いは呼び子、プラスチック製の笛を首にかけた。熊スズは残念ながら登山道具、雑然とした部屋の中に埋まって見つからなかったのがミソ。白駒の池の紅葉はピークを既に過ぎ、苔むした北八ヶ岳の自然の風貌をかみしめる初冬待ちの段階。葉の落ちたナナカマドの赤が印象的な散策道をなぜか熊探しの風体で静かに木道を歩いた。
帰り道は富士見の青木の森の山地につながった。青木の森の崖地は荒地になるには程遠い静かなもんだった。崖を駆け降りるのにわすれず笛を吹き続けた。快感!

